2月18日に日本慢性疾患重症化予防学会から講演を依頼され、腎臓病(特に糖尿病性腎症)におけるタンパク質制限について講演してきました。腎臓病の方は、過度にタンパク質を摂ってはいけないという過去の研究結果があり、栄養指導などでは減塩に続いてタンパク質摂取量についての指導が入ります。タンパク質を過度にとると尿をろ過する糸球体の血流量が増えたり、タンパク質の燃えカスである窒素が尿を運ぶ管を痛めるとされています。しかし、タンパク質を減らしすぎると筋肉量が減ってやせて体力がなくなる、感染症にかかりやすくなり逆効果です。近江八幡での研究結果からも減塩するとタンパク質摂取量も自然に減ります。実際に食べているタンパク質量を尿から調べてみると、腎臓病で通院している患者さんの中には、過度にタンパク質を減らしすぎている方が多いのです。タンパク質摂取の学会基準としては、腎機能が悪い方で0.6-0.8g/kg/日、少し悪い方で0.8-1.0g/kg/日が推奨されていますが、それは厚生労働省が出している健康維持のためのタンパク質摂取量と変わらないのです。つまり日本人のタンパク質摂取量はさほど多くないのが現状で、若い方は別として我々が見ている中年以上の方のタンパク質を減らしなさいという指導はあまり適切ではない。「むしろ適切な量のタンパク質をきちんと摂りましょう」というべきであると私を含めて三人の腎臓専門医の共通の意見でした。
タンパク質の中でも植物性タンパク質、特に大豆(納豆や豆腐など)がよい。動物性タンパク質は魚が良くて、赤身の動物肉は避けるほうがよいという意見でした(滋賀医大の研究者)。私も同感です。
最近、高齢者でも痩せてくる、体重が落ちた。歩くスピードが落ちたなどの声をよく聞きます。そういう状態をフレイルといいますが、フレイル予防には適切なタンパク質摂取と筋トレが必要です。腎臓病の方もそうでない方もぜひ適切な食事療法と運動療法を実践しましょう。